まここ

雑記−左右無し−

もし君が「死が二人をわかつまで」にロマンを見出すとしたら、どういう結末だと思う? ふと思い出して便りを出したら死んでいた時くらいね。 にべもないな。 ロマンは嫌いなのよ。私たちはそうしましょう。 それが良いのかい。 さあ、でも、あなたに見せる死…

かんのう

苦しもうと訪れるものは戦争、平和を望めど意思は消えぬ、ついぞ闇が勝とうと星は死なぬ、それで良いと言える夜のうちに、首を締める振りをして、馬鹿にしたように下卑た笑いで蔑む君は、終われば楽になるだろうと突き放し、終わるまで終わりを思い恐怖する…

色に出ず

男がいる。 大量の白い紙がこすれあう音がやたら響くほど、それに囲まれた男。 歩みをそちらへ向けると、火が燃えている空気の変化に気づいた。 男は、真っ白な紙を無感動な目で、赤や青や、様々な色に染めていた。 染めては火の中に放り込む男の顔に見覚え…

頬甚三紅

染め上げた唇から突いて出るのは 慣れたのか慣れぬのか詰まらないことばかり でもその貪婪な様は、私が霧がけた心を闡明する ああいやだ、よしてください 恬淡な光を放たせた目も、 それを保てなくなるでしょうに やめてください これではまるで、僭する惨め…

知らなかったのだ、私は何も 知れなかったのだ、私は何も 知ったかぶる素振りを出来ることなど少しもないほど 答えのないものをいつまでも愛せる馬鹿のままでいるなら幸せだったろう ところが人は優しく、 あなたの幸せを、と言った 確かに私の幸せはそこに…

かりわたし

秋雨に合わせてさめざめとしてみたが飽いた。 秋色に合わせたスカートを大事に仕舞ううちに紅葉も落ちた。 得る以上に失うことの早さを辟易もせず、穏やかな目で見えているものはそう多くはない。 頭に響くのは、夏の去る音でもなく、冬ざれの乾いた風でもな…

愛よろしく

おかしなことを言う。 本来直視できなかったものが実に軽率になっていく。 肌に吸収される潤いの瑞々しさとは程遠い浸透を見せる。 履き違えるし、為違える。 過ぎ去るものだろうと考えることさえなく私が眠る夜に、清々しい決意がなされていたのかもしれな…

夏座敷

畏れ多くも自ら求めたものが例えば甲斐甲斐しさだとしたら 恐らく君が知らずに望んだものは雄々しさだろう しかしそうなればなるほどに 見えざる君の更に望ましくないさまは 私をまたひとつ嫌な大人へと段階させるので 求めるものはなきしにもあらず ただた…

謹啓

空気に触れるだけで懐かしさを感じる暮夏の候に、 新たな境地を強く感じている彼女と全く心が交えることもなく、 忙しく平凡な毎日に汗を流すのも良し、変化の感じられない距離という意識に気付かぬのも良し、選択し淘汰される世界で、しがみつく必要さえな…