2012-08-01から1ヶ月間の記事一覧

新しい晩夏

未来に生きる自分を思い描いてみると、それはいつも秋か冬で、曇りか雨だった。 どうやら今の季節は、僕からとても遠いところにあるらしい。 一方で、過去を振り返ってみると、当然のことながら、すべての季節においてその情景や空気の匂いが思い出される。…

broken

「硝子は液体だという論がある。私たちの目に見える範囲に於いて、それは全き固体であって、他の相では現れ得ない。しかし高温で溶解した場合には、それは本来の姿を取り戻す。つまり、私たちの目の前に於いても、液体として現れる。 自身の形を捨て去ること…

謹啓

空気に触れるだけで懐かしさを感じる暮夏の候に、 新たな境地を強く感じている彼女と全く心が交えることもなく、 忙しく平凡な毎日に汗を流すのも良し、変化の感じられない距離という意識に気付かぬのも良し、選択し淘汰される世界で、しがみつく必要さえな…

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新しい靴、親しい声。 雑踏はいつもと同じように僕を受け入れてしまう。 足もとを見ないように気をつけた。 誰も僕を見ないというのなら、僕も僕を見ない。 それでも、足跡だけはこの背中を見つめている。 僕を離れた、遠い遠い目線。 それが何を期待してい…