知らなかったのだ、私は何も
知れなかったのだ、私は何も
知ったかぶる素振りを出来ることなど少しもないほど
答えのないものをいつまでも愛せる馬鹿のままでいるなら幸せだったろう
ところが人は優しく、
あなたの幸せを、と言った
確かに私の幸せはそこにはないのだと梅雨の寒さのうちに気付いていたものを
秋口にやっと飽きるような風流な真似をした
ひと月、ふた月、半歳、そして涼む今になるまでにどれほど失おうと、
得たものを知らずに得てしまうような馬鹿だけは出来ず、
また捨てていく
気付かない振りをして落としていく
会話が始まる