肌寒い決意

船は繋がれなくてはならない。
馬は繋がれなくてはならない。
旅人は新しい街を見る度に安堵することだろう。
生きるためには身を一所に置くということが不可欠なのだ。
居場所を求めてしまうのは人間の本能なのだろうか。
愛を語るのはただ一人で、母に代わる者などいない。
そんなことは百も承知なのに、私は玉虫色の輝きに魅せられてばかりで、自らをそれに染め上げてしまう。
あるべき姿とそうありたい姿が一致したのにもかかわらず、世界は息をするように価値観と哲学を蹂躙していく。
精密に組み上げられた日常は脆く、無様であっても走らされた習慣の頑丈さには遠く及ばない。
自らを理屈で固めて、自らで怠り、自らが悔やむ。
あとに残るのは、ひとつひとつまめやかに飾りつけられた言い訳が食い散らかされた様だけだ。
駄目だな、と独りごちた上を明日が覆っていく。