2012-09-20 マッチは早く燃える 鷦鷯 ──秋口。夜の森を走っている。その闇の深さたるや、想像していたよりも遥かに深い。息を切らしている。勝手知ったる庭のように駆けることが出来るのは、そこが一本道だからである。涙を浮かべている。ここを抜けた先については何も知らされていないし、あとどれくらいで抜けるのか、皆目検討がつかない。恐怖に覆われている。確かな一瞬を見逃した後、四方を業火が襲った。救いを求めている。煙らない炎は、私を焼き尽くすこともなかった。手放している。